ALTERNATIVELY SIZED PIANO KEYBOARDS _ 鍵盤の歴史

この記事の元記事: http://smallpianokeyboards.org/keyboard-history/



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Keyboard history - 鍵盤の歴史


Early history - 前史

ピアノの鍵盤は昔からずっと現在のサイズとは限らず、それらは1784年から1876年の間は幅の狭い鍵盤でした。 酒井氏(2008年)は1559年まで遡って様々な鍵盤楽器の鍵盤のスパンの変化を立証しています。
参照: http://www.steinbuhler.com/html/our_research.html
それらは(8個のキーの幅で測定された)クラヴィコードの鍵盤の180mmから、モダン・ピアノの鍵盤の188mmまでに及んでいます。
最も有名なピアノ曲の多くは、鍵盤が小さく(キーの幅が狭く)、曲目にオクターブより大きな音程が滅多に含まれていなかった、1750年から1850年までの時代に書かれています。

19世紀には、リスト(Franz Liszt)などのヨーロッパ人作曲家が大手メーカーと強い結び付きを持っており、メーカーは自社の製品を市場に出すために、これらの作曲家や名演奏家による巡回公演を企画しました。
彼らはさらに、コンサート・ホールの建設や管理も行っていました。例を挙げれば、アントン・ルビンシテイン(Anton Rubinstein)とパデレフスキ(Ignacy Jan Paderewski)が、ともに1800年代後半にスタインウェイのためにアメリカで巡回公演を行っています。

料理や裁縫のように、ピアノの演奏は中流や上流階級の女性の非常に望ましい嗜みと考えられていました。彼らにとってピアノは、求愛儀式など、家庭内活動に欠かせないものでした。
自宅で演奏していたアマチュア(殆ど女性)と人前で演奏する演奏家(殆ど男性)との間には明らかな区別が存在していました。1800年代にパリ音楽院で男女別々のコンクールが開催されました。女性には堂々として女性らしく、淑やかであることが求められており、カール・ツェルニー(Karl Czerny)やその他の人たちから幾つかのタイプの曲目を弾かないよう警告を受けていました。真っ向から男性と比べることは快く思われていませんでした。
チェコの会社は『婦人』用の小さい鍵盤を販売していました。

The 20th century - 20世紀

今日の鍵盤のサイズは、リスト(Franz Liszt)などがメーカーに積極的に関与していた時代から間もない1880年頃まで遡ります。
それ以後の注目すべき例外としては、前世紀の初め頃にヨゼフ・ホフマン(Josef Hofmann)のためにスタインウェイ・アンド・サンズによって特別に造られた(キーの幅の狭い)小さな鍵盤が挙げられます。1986年に、スタインウェイ・ハンブルグがクリストフ・ワグナー教授(Prof Dr Christoph Wagner)(1974-1993年、ハノーバー音楽生理学研究所(Hanover Institute of Music Physiology)の創設者兼責任者)に提供した証拠書類で、ホフマンの鍵盤は標準のものより3.5cm細かったと述べられています。これは標準より0.5cm小さい16cm(6.3インチ)のオクターブ幅であることを指しています。
この手紙の原本の写し(ドイツ語)と英語の翻訳がこちらから入手できます。
http://smallpianokeyboards.org/wp-content/uploads/2019/03/Steinway-letter-to-ChWagner_Hofmann-keyboard_1986_original.pdf
http://smallpianokeyboards.org/wp-content/uploads/2019/03/Steinway_Wagner_Hofmann-keyboard_1986_engl2017.pdf

ホフマンの手のスパンに関連したこれらの鍵盤に対する更なる見解については次のURLにアクセスしてください。
http://paskpiano.org/keyboard-history/
また一方で、他にもホフマンが自身の演奏経歴の間に造ったというもっと小さい鍵盤もあったという証拠もあります。
参照: http://dsstandardfoundation.org/piano-keyboards-of-the-past/

19世紀後半から20世紀初頭にかけての他の変化としては鋳鉄フレームの使用が挙げられ、それはアクションの重さ、キーの長さ、白鍵の上の黒鍵の高さが増し、白鍵と黒鍵の垂直の下がり込みがより重く、深くなる原因となった弦の張力の増加をもたらしました。
ピアノの進化に伴い、(プロやアマチュアの)ピアニストが自分の地域から出始めるにつれて規格化の必要性が高まったため、前世紀には『one size fits all(どんな人にも合うフリーサイズ)』というやり方が広く行き渡ることとなりました。

『そのピアノのサイズもまた、少年少女に異なった影響を及ぼしました。18世紀においては、ピアノはハープシコードくらいの大きさで、大抵はより小さいものでした。
19世紀の初めでもやはり、床面の高さに登場したペダル、両方向に大きくなった鍵盤、そして最新の曲目に度々現れるオクターブのパッセージによって、ピアノは突然、それを習う子供達にとって、大人の世界で見合うために彼らがどれほど頑張らなければならなかったかという、気力を失わせるような日々を思い出させるものになってしまいました。
子供は異なる速度で成長し、人より早く成長してピアノが弾けるようになる子もいます。ですが、少年達よりはるかに多くの少女達が、楽器も、そして大きな手の男性によって作曲された曲目のパートも、自分達の手が届く範囲には全く無いのだろうと感じていました。
楽器自体がサイズを変えようとしなかったので、ピアニストの椅子がそれに適応するための、子供や様々な大きさの演奏者を助ける一般的な主要手段となっています。』

・・・・パラキラス(Parakilas)他、1999年、Piano Roles(ピアノの役割)、p.151。

ラルフ・マンチェスター(Ralph Manchester)博士は、『one size fits all(どんな人にも合うフリーサイズ)』という方法の問題について以下のように約言しています。

『楽器の設計は長い期間をかけて徐々に展開してきており、そしてそれが現在私たちの直面している問題の一端となっています。
それらの楽器の設計者は、ほとんどの場合数十年もの間住まいも仕事も主にヨーロッパにあった数世紀前の(女性よりはむしろ)男性達でした。彼らが、自分たちが使えて、殆どが男性だった当時の大多数の音楽家に支持される楽器を設計した可能性が高いです。
現在音楽家は、はるかに多くの女性、比較的少数のヨーロッパ系の人々、そして様々な身体障害のあるより多くの人々といった多岐にわたるグループから成っています。それにもかかわらず、私たちは、極めて同種の演奏者のグループのために設計された楽器を未だに演奏しているのです。』

(社説、MPPA、2006年12月。)

1880年以降、ピアノを専攻するアジア系の学生数が大幅に増加しただけでなく、演奏家としてのキャリアを積むことを目的として高等レベルのレッスンに取り組む女性も非常に増えていきました。
女性の手は男性よりも約15%小さく、アジア人の手は白色人種よりも小さいのです。加えて、20世紀のピアノ曲は、17~19世紀に作曲された曲目よりも大きな手のスパンを度々必要とします。

The invention and development of the DS Standard® piano keyboard with narrower keys
- キーの幅の狭いDS規格®のピアノ鍵盤の発明と開発

1990年代初頭、カナダのブリティッシュ・コロンビア州のピアニストで作曲家、および指揮者のクリストファー・ドニソン(Christopher Donison)氏は、ペンシルベニア州の繊維製品メーカーで技術者のディビッド・シュタインビューラー(David Steinbuhler)氏と出会いました。
彼らは共に、広く利用可能になりつつある第2の公式な鍵盤サイズ(DS規格®)の長期目標を抱き、それを生み出しました。

1994年にシュタインビューラー社(Steinbuhler & Company)によって最初の試作鍵盤が造られました。
1996年に同社で初めて販売されたのは、それを試してみるためにカナダのブリティッシュ・コロンビア州から飛行機で飛んできたカナダ人ピアニストのリンダ・グールド(Linda Gould)氏へのものでした。彼女は、自身のヤマハのグランドピアノ用にDS5.5®鍵盤を買うことを即決しました。
ここで彼女の話を聞くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=Jn9-c8n0Q3s&list=PLHBn-VaaOCGcAanKWSo7pCA0GFfQa7N1b

1998~2005年の間、シュタインビューラー氏は全種類のピアノの鍵盤のサイズを試すために、ペンシルベニア州のタイタスビルにある自社の施設に成人のピアニストを招待しました。参加者は検証作業や大きさの違う鍵盤の間での交換に数時間から数日間もの時間が使えました。標準鍵盤に加えて、少なくとも2つのより小さな鍵盤サイズに対する強い欲求があることが明らかになりました。
手の小さいピアニストのための最も実用的なサイズの鍵盤を決定するため、全幅で38~42インチ(96.5~106.7cm)ある5つの鍵盤を使った詳細な調査が行われました。およそ15人のピアニストがこれらの鍵盤を試しました。
全員が最も小さな鍵盤を演奏することを望みましたが、40インチ(約101.6cm)未満では、指の細い最も手が小さい人達を除く全ての人達にとっては黒鍵の間のスペースが窮屈になりすぎてしまうことに気付きました。

そのため、鍵盤の小さいピアノを設置する初めての米国の大学であるテキサス州の南メソジスト大学は、2000年にサイズの小さい手のための利用可能な最善の選択肢として41インチ(約104.14cm)を選びました。SMU(南メソジスト大学)の鍵盤楽器学科の学科長であるキャロル・レオーネ(Carol Leone)博士は鍵盤の利点に関する研究を始めました。
これらの小さい鍵盤のアクションは、最低限の技術的な調整をするだけで同じ製造社やモデルのピアノに取り付けることもできます。レオーネ博士は、彼女の鍵盤アクションを持参して移動し、他のアメリカの大学でその使用を実証しました。
結果的にこれらの大学の殆どが学生の使用や更なる研究用に自校の鍵盤アクションを入手しました。

その後3つの規格が次の通りに確定しました。(既定のオクターブ測定値は白鍵7個分の全幅を示す)

DS6.5™(標準鍵盤)
オクターブ: 6.5インチ(16.5cm)
全幅: 48.29インチ(122.7cm)

DS6.0®(ユニバーサル鍵盤、標準の15/16の幅)
オクターブ: 6.0インチ(15.2cm)
全幅: 44.57インチ(113.2cm)

DS5.5®(7/8鍵盤)
オクターブ: 5.54インチ(14.1cm)
全幅: 41.14インチ(104.5cm)

シュタインビューラー社はここ最近、さらに小さい以下のサイズを追加しています。

DS5.1®(子供用鍵盤)
オクターブ: 5.11インチ(13.0cm)
全幅: 37.94インチ(96.37cm)

上記のホフマンの鍵盤のサイズはオクターブが6.3インチ(約160cm)で、DS6.5™とDS6.0®の間のサイズでした。

近年、著名なピアニストで指揮者のダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)氏は、キーの幅の細い鍵盤のスタインウェイでの周遊や公演を行っています。

Terminology, references and links - 用語、参考文献、およびリンク

ESPK(Ergonomically Scaled Piano Keyboard(人間工学的にスケーリングされたピアノ鍵盤))という用語は、現在の『一般的な』サイズ(すなわち6.5インチのもの)より小さい鍵盤を指す際に、現在主に学界にて使われています。
『reduced-size keyboard(サイズを小さくした鍵盤)』という用語を使用している文献もあります。
ここで留意すべきもやはり、キーの幅が『一般的な』鍵盤のほぼ7/8(ただし、少しだけ異なる)であるために、DS5.5®がよく『7/8鍵盤』と称されていることです。同様に、DS6.0®もしばしば15/16鍵盤と称されています。
ESPKは他のサイズ、すなわちDS規格に当てはまらない鍵盤も含んだ総称です。
『DS』という略称は、Donison-Steinbuhler(ドニソン-シュタインビューラー)を表しています。(クリス・ドニソン(Chris Donison)氏とディビッド・シュタインビューラー(David Steinbuhler)氏は、主に北米でアコースティック・ピアノ用のキーの幅の狭いピアノ鍵盤の導入への道を切り開きました。)
PASK運動(Pianists for Alternatively Sized Keyboards(鍵盤サイズの選択を支持するピアニスト))では、『reduced size』が、“キーの数が少ない”という意味を暗に含む恐れがあることによる言葉の意味の取り違えを防ぐため、『alternative sizes(選択できるサイズ)』という一般用語を用いています。

http://www.steinbuhler.com/html/our_research.html

http://www.nytimes.com/2008/11/23/arts/music/23kimm.html?pagewanted=all&_r=2&

https://en.wikipedia.org/wiki/Social_history_of_the_piano

Booker, E., & Boyle, R.(ブッカー・E、& ボイル・R)(2011年)
Piano keyboards – one size does not fit all! Pianistic health for the next generation.(ピアノの鍵盤に誰にでも使える1つのサイズなどありません!次世代のピアノ演奏の健康。)
Proceedings of the 10th Australasian Piano Pedagogy Conference(第10回オーストラレーシア・ピアノ教育学会議の議事録): Leading Notes to Effective Teaching(効果的な教育への導音): Resolving the past - Exploring the future(過去を解決し、未来を探究する), Charles Sturt University(チャールズ・スタート大学), Wagga Wagga, 4-8 July 2011(ウォガウォガ、2011年7月4日~8日).
http://www.appca.com.au/proceedings/

Deahl, L. & Wristen, B.(ディール・L、& ライステン・B)(2003年)
Strategies for small-handed pianists.(小さい手のピアニストのための戦略。)
American Music Teacher(アメリカン・ミュージック・ティーチャー), 52 (6), 21-25.
http://www.thefreelibrary.com/Strategies+for+small-handed+pianists.-a0102521600

Donison, C.(ドニソン・C)(1998年)
Small hands? Try this keyboard, you'll like it.(手が小さい?この鍵盤を試してみてください。Sそれを気に入るでしょう。)
Piano & Keyboard, July-August(ピアノ・アンド・キーボード、7月~8月), 41-43.

Donison, C.(ドニソン・C)(2000年)
Hand size versus the standard piano keyboard.(手のサイズと標準のピアノ鍵盤との比較。)
Medical Problems of Performing Artists, 15, 111-114.(アーティストの医学的問題、15、111-114。)
http://chrisdonison.com/keyboard.html

Manchester, R.(マンチェスター・R)(2006年)
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Parakilas, J. & others.(パラキラス・J、& 他)(1999年)
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Keyboard span in old musical instruments.(古楽器の鍵盤のスパン。)
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Wagner, Ch.(ワグナー・Ch.)(2005年)
Hand und Instrument.(手と楽器。)
Breitkopf & Härtel(ブライトコプフ & ヘリテル), Wiesbaden-Leipzig-Paris(ヴィースバーデン・ライプツィヒ・パリ), p. 228-240.

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