PIANISTS FOR ALTERNATIVELY SIZED KEYBOARDS_鍵盤が今の大きさになった理由

この記事の元記事: https://paskpiano.org/keyboard-history/



PIANISTS FOR ALTERNATIVELY SIZED KEYBOARDS


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If everyone plays the same size,
most are playing the wrong size!

みんなで同じサイズを弾くと、
ほとんどの人が不適切なサイズを弾いています!


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Keyboard history
鍵盤の歴史


Early history
初期の歴史


ピアノの鍵盤は昔から現在のような大きさだったわけではなく、1784年から1876年までの間は鍵盤の幅が狭いものが大半でした。酒井氏(2008年)は、1559年まで遡る様々な鍵盤楽器の鍵盤幅の変化を記録しています。モダンピアノの鍵盤(7つの鍵盤にわたって測定)では、その範囲は156 mmから188 mmです。
最もよく知られているピアノの曲目の多くは、鍵盤が小さく(鍵盤の幅が狭く)、曲目にオクターブを超える音程がほとんど含まれていなかった、1750年から1850年の間に書かれたものです。
参照: https://www.piano-tuners.org/history/compass.html

ビッテンコート(Bittencourt)氏(2022年)は、18世紀から19世紀にかけて製造された、主に子供向けに設計されたキーの幅が狭い様々なピアノの鍵盤を記録しています。

料理や裁縫のように、ピアノの演奏は中流や上流階級の女性の非常に望ましい嗜みと考えられていました。彼らにとってピアノは、求愛儀式など、家庭内活動に欠かせないものでした。
自宅で演奏していたアマチュア(殆ど女性)と人前で演奏する演奏家(殆ど男性)との間には明らかな区別が存在していました。1800年代にパリ音楽院で男女別々のコンクールが開催されました。女性には堂々として女性らしく、淑やかであることが求められており、カール・ツェルニー(Karl Czerny)やその他の人たちから幾つかのタイプの曲目を弾かないよう警告を受けていました。真っ向から男性と比べることは快く思われていませんでした。しかしながら、ピアノを教えることは女性にも容認された職業でした。
チェコの会社は『婦人』用の小さい鍵盤を販売していました。

19 世紀、リスト(Liszt)やカルクブレンナー(Kalkbrenner)といったヨーロッパの作曲家たちは、自社製品を売り込むためにコンサートホールを建設したり、これらの作曲家やヴィルトゥオーゾ(名演奏家)のリサイタルを開催したりする大手メーカーと密接な関係を築いていました。
アントン・ルービンシュタイン(Anton Rubinstein)やパデレフスキー(Paderewski)といったピアニストが、ともに1800年代後半にスタインウェイのためにアメリカで巡回公演を行っています。


Standardisation dates from the late 1880s
標準化の始まりは1880年代後半


今日の鍵盤の大きさは、男性のヴィルトゥオーゾ(名演奏家)たちがまだピアノメーカーと積極的に関わり、プロモーションを行っていた1880年頃に遡ります。
大きなコンサートホールでより大きな音を出すために、ピアノの設計では、交差弦とより大きな響板を取り入れるようになり、キーの広がりの角度を最小限に抑えるために鍵盤の幅を広くするようになりました。

(パデレフスキやアントン・ルービンシュタインなど)ヴィルトゥオーゾ(名演奏家)は手の大きな男性であったため、多少鍵盤が広くても問題は無かったでしょう。
当時の基本的な交差弦の構造はオクターブで6.5インチ(16.51 cm)の『標準』鍵盤を備えており、それ以来、ほぼすべてのアコースティックピアノのメーカーがグランドピアノとアップライトピアノの両方で採用しました。デジタルピアノと鍵盤メーカーもこの流れに追随したにすぎません。

19世紀後半から20世紀初頭にかけてのその他の変化としては、弦の張力が増加してより重く深いアクションをもたらす鋳鉄製のフレームの使用、キーの長さ、白鍵に対する黒鍵の高さ、黒鍵と白鍵の垂直方向の傾きなどが挙げられる。
ピアノが進化するにつれて、ピアニスト(プロ・アマを問わず)が自分の住む地域以外へ旅するようになり、規格化の必要性が高まり、そのため、過去1世紀にわたる『定型的な』やり方が普及しました。

『ピアノの大きさもまた、少年と少女に異なる影響を与えました。18 世紀にはピアノはハープシコード(チェンバロ)ほどの大きさしかなく、それより小さいことも多かったのです。
しかし19世紀初頭、ペダルが床の高さに置かれ、鍵盤が左右に広がり、最新の曲目にオクターブのパッセージが定期的に登場するようになると、ピアノを習う子供たちにとってピアノは突然、大人の世界で応えるにはどれだけの努力をしなければならないかを日々思い起こさせる、やる気をくじかれるようなものになりました。
子供の成長速度はそれぞれ異なり、ピアノに早く馴染む子もいますが、ピアノという楽器、あるいは手が大きい男性によって作られた曲目のパートを、自分の手の届く範囲で弾くことは決してできないと感じている少女は、少年よりもはるかに多いでしょう。
楽器自体の大きさが断固として変わらないため、ピアニストの座席が、子供や一般的に体格の異なる演奏者が楽器に適応できるようにするための主な手段となってきました。』

パラキラス(Parakilas)他、1999年、Piano Roles(ピアノの役割)、p.151。

ラルフ・マンチェスター(Ralph Manchester)博士は、『画一的(one size fits all)』なやり方の問題点を次のようにまとめています。

『楽器の設計は長い期間をかけて徐々に展開してきており、そしてそれが現在私たちの直面している問題の一端となっています。
それらの楽器の設計者は、ほとんどの場合数十年もの間住まいも仕事も主にヨーロッパにあった数世紀前の(女性よりはむしろ)男性達でした。彼らが、自分たちが使えて、殆どが男性だった当時の大多数の音楽家に支持される楽器を設計した可能性が高いです。
現在音楽家は、はるかに多くの女性、比較的少数のヨーロッパ系の人々、そして様々な身体障害のあるより多くの人々といった多岐にわたるグループから成っています。それにもかかわらず、私たちは、極めて同種の演奏者のグループのために設計された楽器を未だに演奏しているのです。』

(社説、MPPA、2006年12月。)

1880年以降、ピアノを専攻するアジア系の学生数が大幅に増加しただけでなく、演奏家としてのキャリアを積むことを目的として高等レベルのレッスンに取り組む女性も非常に増えていきました。
女性の手は男性よりも約15%小さく、アジア人の手は白色人種よりも小さいのです。加えて、20世紀のピアノ曲は、17~19世紀に作曲された曲目よりも大きな手のスパンを度々必要とします。

しかしながら20世紀には、標準鍵盤を弾く『小さな手』の負担を軽減するために、キーの幅の狭いモデルやその他の発明を試みた企業もありましたが、『標準的な』6.5インチ鍵盤の大量生産と普及には太刀打ちできませんでした。
幾つかの企業は、ベーゼンドルファーのダブル鍵盤付きグランドピアノなど、ダブル鍵盤付きのピアノを製造しました。1940 年代のヤマハの『教育用』二段鍵盤アップライトピアノには、子供の手が十分に成長して『大きな』鍵盤を弾けるようになるまで、小さな子供のために設計された下段の鍵盤が内蔵されていました。
ヤマハとカワイの両社による鍵盤幅の狭いピアノ(小型グランドピアノとアップライトピアノ)は、1990年代に日本国内でのみ限定的に販売され、2000年に死去するまで中田喜直氏によって積極的に宣伝されました。

2000年、オランダのピアノメーカーのアンドリーセン(Andriessen)は、ヤマハのU1アップライトピアノに細幅鍵盤(7/8と3/4)が組み込まれた『キンダークラヴィア(Kinderklavier)』(『子供用』ピアノ)の販売を開始しました。
残念ながらわずか2年後、フランス・ウィレム・アンドリーセン(Frans Willem Andriessen)氏が死去し、プロジェクトは中止されました。

以下の画像は、二段鍵盤を搭載した復元されたヤマハと、1958 年に特許を取得したゴールドハンマーの鍵盤を示しています。






Josef Hofmann
ヨゼフ・ホフマン


1900年以降の特筆すべき例外には、前世紀初頭に、著名な名演奏家のヨゼフ・ホフマン(Josef Hofmann)のためにスタインウェイ・アンド・サンズ社が特別に製作した、キーの幅が狭い鍵盤が挙げられます。

1986 年にスタインウェイ・ハンブルク社が、クリストフ・ワーグナー(Christoph Wagner)教授(ハノーバー音楽生理学研究所(Hanover Institute of Music Physiology)の創設者兼所長、1974年~1993年)に提出した証拠書類によると、ホフマンの鍵盤は、通常の鍵盤より 3.5 cm狭かったとされています。
これはオクターブ幅が16 cm(6.3 インチ)となり、通常より0.5 cm狭いものです。

彼の手のスパンは特に小さいわけではありませんでしたが、当時の他の多くの有名な男性コンサートピアニストに比べると間違いなく小さかったのです。ですが、彼の手は現代の成人女性の大多数の手よりも大きかったのです。
興味深いのは、彼でさえ『さらに大きな手』を望んでいたことです。

彼の手の写真はこちらをご覧ください。




The invention and development of the DS Standard® piano keyboard with narrower keys
鍵盤幅の狭いDS規格(DS Standard®)ピアノ鍵盤の発明と開発


1990年代初頭、カナダのブリティッシュコロンビア州出身のピアニスト、作曲家、指揮者であるクリストファー・ドニソン(Christopher Donison)氏は、ペンシルベニア州の繊維製造業者兼エンジニアであるデイビッド・シュタインビューラー(David Steinbuhler)氏と出会いました。
彼らは共同で第2の公式鍵盤サイズ(DS標準®)を作成し、それが世界中で広く利用可能になることを長期的な目標としました。

最初の試作鍵盤は、1994年にシュタインビューラー社によって製作されました。
同社の最初の販売は1996年の、カナダのピアニスト、リンダ・グールド(Linda Gould)氏へのもので、彼女はカナダのブリティッシュコロンビア州から飛行機で試奏に訪れました。彼女は自身のヤマハのグランドピアノ用に DS5.5®鍵盤を購入することをすぐに決めました。彼女の話をここで聞くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=Jn9-c8n0Q3s&list=PLHBn-VaaOCGcAanKWSo7pCA0GFfQa7N1b

1998年から2005年にかけてシュタインビューラー氏は、ペンシルベニア州タイタスビルにある彼らのセンターに成人のピアニストを招き、全種類のサイズのピアノ鍵盤を試奏してもらいました。参加者は、様々なサイズの鍵盤を何時間も、あるいは何日もかけて試したり交換したりすることができました。従来の鍵盤に加えて、少なくとも 2 つのより小さいサイズの鍵盤に対する強い要望があることが明らかになりました。
手の小さいピアニストにとって最も実用的なサイズの鍵盤を決定するため、全体幅が 38~42インチ(96.5~106.7 cm)の5つの鍵盤を使用して詳細な研究が行われました。約15人のピアニストがこれらの鍵盤を試奏しました。
最小の鍵盤を弾きたいという全体的な要望はあったものの、40インチ(101.6 cm)未満では黒鍵の間隔が狭くなりすぎて、指が細く手の小さな人以外は弾きづらくなることが判明しました。

このような理由から、2000年に米国で初めてESPK(人間工学に基づいてスケーリングされたピアノ鍵盤)*をピアノに設置した大学であるテキサス州のサザンメソジスト大学は、手の小さい人たちにとって最適な選択肢としてDS5.5®を採用しました。
サザンメソジスト大学の鍵盤楽器研究室の学科長であるキャロル・レオーネ(Carol Leone)博士は、この鍵盤の利点に関する研究を開始しました。これら小型の鍵盤アクションは、最小限の技術的調整で同一メーカー・モデルのピアノにも取り付け可能です。レオーネ博士は自身の鍵盤アクションを携えて他のアメリカの大学を回り、その使用法を実演しました。その結果、これらの大学のほとんどが、学生の使用と更なる研究のために独自のDS鍵盤アクションを導入しました。

その後、次の3つの規格が定義されました。(示されているオクターブの測定値は、7 つの白鍵の合計幅を表します。)

DS6.5™ (標準鍵盤)
オクターブ6.5インチ(16.5 cm)、全幅48.29インチ(122.7 cm)。

DS6.0® (ユニバーサル(誰でも使える)鍵盤、標準鍵盤の15/16の幅)
オクターブ6.0インチ(15.2 cm)、全幅44.57インチ(113.2 cm)。

DS5.5®(7/8鍵盤)
オクターブ5.54インチ(14.1 cm)、全幅41.14インチ(104.5 cm)。

さらに最近では、デイビッド・シュタインビューラー(David Steinbuhler)氏は更に小さいサイズを追加しました。

DS5.1® (子供用鍵盤)
オクターブ5.11インチ(13.0 cm)、全幅37.94インチ(96.37 cm)

前述のホフマン(Hofmann)の鍵盤のサイズは、DS6.5™とDS6.0®の中間に位置し、オクターブ幅は6.3インチ(16.0 cm)でした。


The 21st century
20世紀


PASKネットワークの形成、ハイルンピアノ(海倫鋼琴)などの企業による初期段階の取り組み、カドゥック(Kaduk)などのスタートアップによるデジタル技術の活用など、変革の勢いは続いています。

近年、著名なピアニスト兼指揮者のダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)氏は、鍵盤幅の狭いピアノで演奏しながら各地を巡っています。
クルーゲ(Kluge)が製作した彼の鍵盤の幅は、1世紀前にヨゼフ・ホフマン(Josef Hofmann)が使用していたものとほぼ同じで、オクターブ6.3インチ(16.0 cm)です。

シュタインビューラー社はDS規格財団(DS Standard Foundation)という非営利団体に転換され、引き続きアコースティック DS®鍵盤を製造し、大学への貸し出しを行っています。
https://dsstandardfoundation.org


References and links
参考文献とリンク



ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)氏のインタビュー、2008年。
http://www.nytimes.com/2008/11/23/arts/music/23kimm.html?pagewanted=all&_r=2&


Bittencourt de Assis Periera, R.(ビッテンコート・デ・アシス・ペリエラ・R)(2022年)
Anne Elisabeth Cécile Soria (ca. 1766 – 1843) et les claviers de piano ergonomiques.(アンヌ・エリザベート・セシル・ソリア(1766年頃~1843年)と人間工学に基づいたピアノ鍵盤。)
Sorbonne University, Paris.(ソルボンヌ大学、パリ。)
https://catalogue.philharmoniedeparis.fr/catalogue/doc/ALOES/1142779/anne-elisabeth-cecile-soria-ca-1766-1843-et-les-claviers-de-piano-ergonomiques-master-recherche-sorb?_lg=fr-FR


ベーゼンドルファーの二段鍵盤付きグランドピアノ
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/503040


Booker, E., & Boyle, R.(ブッカー・E、& ボイル・R)(2011年)
Piano keyboards – one size does not fit all! Pianistic health for the next generation.(ピアノの鍵盤に誰にでも使える1つのサイズなどありません!次世代のピアノ演奏の健康。)
Proceedings of the 10th Australasian Piano Pedagogy Conference: Leading Notes to Effective Teaching: Resolving the past - Exploring the future.(第10回オーストラレーシア・ピアノ教育学会議の議事録: 効果的な教育への導音: 過去を解決し、未来を探究する。)
Charles Sturt University(チャールズ・スタート大学), Wagga Wagga, 4-8 July 2011.(ウォガウォガ、2011年7月4日~8日。)
http://www.appca.com.au/proceedings/


Deahl, L. & Wristen, B.(ディール・L、& ライステン・B)(2003年)
Strategies for small-handed pianists.(小さい手のピアニストのための戦略。)
American Music Teacher(アメリカン・ミュージック・ティーチャー), 52 (6), 21-25.
http://www.thefreelibrary.com/Strategies+for+small-handed+pianists.-a0102521600


Donison, C.(ドニソン・C)(1998年)
Small hands? Try this keyboard, you'll like it.(手が小さい?この鍵盤を試してみてください。それを気に入るでしょう。)
Piano & Keyboard, July-August(ピアノ・アンド・キーボード、7月~8月), 41-43.
http://chrisdonison.com/keyboard.html


Donison, C.(ドニソン・C)(2000年)
Hand size versus the standard piano keyboard.(手のサイズと標準のピアノ鍵盤との比較。)
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https://www.researchgate.net/publication/298965976_Hand_size_versus_the_standard_piano_keyboard


Manchester, R.(マンチェスター・R)(2006年)
Musical instrument ergonomics (editorial).(楽器人間工学(社説)。)
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https://www.researchgate.net/publication/289873419_Musical_Instrument_Ergonomics


Parakilas, J. & others.(パラキラス・J、& 他)(1999年)
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https://search.worldcat.org/ja/title/Piano-roles-:-three-hundred-years-of-life-with-the-piano/oclc/41231523


Sakai N.(酒井・N)(2008年)
Keyboard span in old musical instruments.(古楽器の鍵盤のスパン。)
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https://www.researchgate.net/publication/289649790_Keyboard_Span_in_Old_Musical_Instruments_Concerning_Hand_Span_and_Overuse_Problems_in_Pianists


Wagner, Ch.(ワグナー・Ch.)(2005年)
Hand und Instrument.(手と楽器。)
Breitkopf & Härtel(ブライトコプフ & ヘリテル), Wiesbaden-Leipzig-Paris(ヴィースバーデン・ライプツィヒ・パリ), p. 228-240.
https://www.stretta-music.de/wagner-wohlwender-hand-und-instrument-nr-362518.html


https://en.wikipedia.org/wiki/Social_history_of_the_piano


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